頭がパンパンな感じがして、考えがまとまらなかったり集中力が散漫になったり、酷くなると頭痛や吐き気やめまいなどの症状が出てしまったなんて経験はありませんか?もしかすると脳脊髄液の流れが悪くなってしまっているかもしれません。
目次
脳脊髄液とは
脳脊髄液(髄液)は、血液、リンパ液と同じ体内を循環する体液の一つです。
脳脊髄液の役割
①クッション
脳や脊髄を衝撃や外力から守るクッションのような役割を果たして保護します。
例えると、お豆腐のパック。お豆腐のパックに水が入っているように、脳は硬い頭蓋骨の中で水に浮いたような状態にあります。そのおかげで、脳に多少の衝撃を受けても耐えられるのです。
②栄養補給と老廃物排出
脳に栄養を補給して、老廃物を排出します。
血液が全身を巡って、身体中に栄養を届け老廃物を排出するように、脳脊髄液も同じような役割りを果たします。脳と脳神経に栄養を与えて、老廃物を脳の外へ出し、脳の働きを正常に保ってくれるのです。
脳脊髄液の流れ
脳脊髄液は、脳の深部にある側脳室、第3脳室、第4脳室の脈絡叢(血管が豊富な組織)で血液をろ過して1日に約500ml作り出されて、脳表面の軟膜(なんまく)とくも膜の間の「くも膜下腔」へと流れ、脳表面と背中の中にある脊髄(脳から続く中枢神経)を循環します。循環を終えた古い脳脊髄液は脳の表面にある静脈へと排出されます。
脳内の老廃物どのように処理されるの?
脳にはリンパ管がないため、脳内の老廃物がどのように処理されるのかは長年の謎でした。
しかし2013年にアメリカ・ロチェスター大学の研究チームが脳脊髄液による脳の老廃物処理システムを発見しました。そして脳の血管周囲に密着している「グリア細胞」が、血管の周りに脳脊髄液を循環させる水路のようなルートを作っていることが解りました。そこで老廃物の処理や栄養補給がおこなわれていることが明らかになったのです。この脳内リンパ系システムは「グリア(glia)」と「リンパ系の(lymphatic)」を合わせて「グリンパティックシステム」と命名されました。
この「グリンパティックシステム」が最も良く働くのは、ノンレム睡眠中の一番深い眠りのときです。
ノンレム睡眠(non-REM sleep)とは、脳と体の両方が休んでいる深い睡眠状態です。 ノンレム睡眠とレム睡眠(REM sleep)は質的に異なる二つの睡眠段階に分類され、ノンレム-レム睡眠周期は90~120分間です。睡眠はまずノンレム睡眠から始まり、眠りについてから1時間ほどたつと、徐々に眠りが浅くなり、レム睡眠へと移行します。
グリア細胞の一種「アストロサイト」:
突起が星(アストロ)のように見えるため「アストロサイト」と呼ばれる。この突起を伸ばして脳内を走る毛細血管から神経細胞に栄養を運んだり、外からの不要な物質が入り込まないようにバリアの役目もする。
アストロサイトの働きを例えると…
- 栄養の運び手として、血管からエネルギーを「配送」する配達員
- 守り手として、脳を外敵から守る「門番」
- 掃除屋として、老廃物を処理して脳を「クリーニング」する清掃員
日中の脳の状態(ぎゅうぎゅう)
日中は神経細胞(ニューロン)やグリア細胞が活発に働くため、脳内は脳細胞でギュウギュウに埋め尽くされます。アストロサイトは血管周囲で脳脊髄液の流れを導き、老廃物を静脈や脳脊髄液の排出経路に運びますが流れは緩慢で老廃物が溜まりやすい。
ノンレム睡眠時の脳の状態
日中に活発だった神経細胞もノンレム睡眠の深い段階に入ると休息モードに入り、グリア細胞も小さくしぼみます。グリア細胞が小さくなることで脳内に隙間ができるので、脳脊髄液の通り道ができて、脳に溜まった老廃物もしっかり流されるようになります。
脳脊髄液の流れが悪くなる原因は?
日頃の不良姿勢が原因の一つです。
脳脊髄液は脳と脊髄を包んでいる硬膜(こうまく)と、くも膜の間を循環しています。硬膜は頚椎(首のほね)の1・2番と仙骨(骨盤)に付着しているので、身体が歪む(特に上部頚椎と骨盤)と硬膜全体も歪んでしまいます。
例えば、一本のホースを思い浮かべてください。ホースの先端を頚椎の1・2番、尾の部分を仙骨(骨盤)としましょう。ホースの先端をひねるとホース全体がねじれます。逆に尾の部分をひねってもホース全体がねじれます。このねじれた状態で水を流すと、流れが悪くなっていることが想像できると思います。身体も同じように硬膜の下を流れている脳脊髄液の循環が悪くなってしまうのです。
このように脳脊髄液の循環が悪くなると脳に圧力がかかり、「頭がパンパンな感覚」に繋がってきます。脳圧が高くなると頭痛、吐き気、めまいなどの症状が出たり、自律神経の中枢である視床下部の働きが弱くなって自律神経が乱れてしまいます。自律神経が乱れると睡眠の質が低下して脳の老廃物がうまく処理されず、脳が正常に働かなくなるという悪循環に陥ってしまいます
まとめ
いかがでしょうか、少しでも「頭がパンパンな感覚」の原因や解消法についての理解が深まりましたでしょうか?
日々の生活の中で、脳脊髄液の流れを意識した体調管理や姿勢改善を取り入れることが、頭や体のスッキリ感につながります。当院では、頭蓋骨の調整や頚椎、骨盤の矯正で脳脊髄液の循環を正常に戻していきます。「頭がパンパンな感覚」を感じた場合や、改善のサポートが必要な際は、ぜひ当院にご相談ください。お一人おひとりに合った丁寧なケアで、健康で快適な毎日をサポートいたします。
参照文献:
Nedergaard M:Science. 2013;340(6140):1529-30.
BenjaminA.Plog.et al.Annu.Rev.Pathol.Mech.Dis.2018.13:379–94
脳脊髄液の産生と循環 ゴロー/イラストで学ぶ体の仕組み